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【2025年6月】電気代動向と今後の見通し

私たちの日々の暮らしや事業活動において、電気代は逃れようのない大きなコストです。特に近年は、国際情勢やエネルギー市場の変動により、電気代が大きく高下し、私たちの生活や経営を圧迫することも少なくありません。

2025年6月現在、電気代はどのような状況にあるのでしょうか?

個人と法人、それぞれの視点から現状を分析し、今後の見通しを原油価格などの主要な要因から予測、さらには利用できる補助金についても詳しく解説していきます。

 

1.電気代動向(個人)

2025年6月現在、一般家庭向けの電気代は、依然として高い水準で推移しています。昨年来の国際的なエネルギー価格高騰と円安の影響を強く受けていますが、供給側の状況が若干改善されつつあることで、極端な上昇は一旦落ち着きを見せている状況です。

具体的には、大手電力会社の規制料金(国に届出を行い、認可された料金)については、政府の電気・ガス価格激変緩和対策事業による補助金(後述)が段階的に縮小されているため、実質的な負担感は依然として残っています。自由料金プランにおいては、電力会社間の競争により、多様な料金プランが提供されていますが、LNG等の市場価格の変動が燃料費調整額により料金に直接反映される傾向にあります。

 

①燃料費調整額の動向

燃料費調整額は、火力発電の燃料となる原油、LNG、石炭の価格変動を電気料金に反映させる仕組みです。

過去数ヶ月の原油価格は、OPECプラスによる生産調整や地政学リスクの影響を受けつつも、供給過剰感から高騰はひと段落しており、これが燃料費調整額の上昇をある程度抑制する方向に働いています。

しかし、為替市場の円安傾向は依然として続いており、輸入燃料の円建て価格は高止まりしています。この円安が、燃料費調整額の抑制効果を相殺している側面もあります。

 

②電力会社の状況

各電力会社によって、電気料金のプランや燃料調達の状況は異なります。

例えば、水力発電の比率が高い電力会社は燃料費変動の影響を受けにくい傾向にありますが、大半の電力会社は火力発電に依存しているため、燃料費調整額が電気代全体に大きく影響します。

また、各社が提供する自由料金プランでは、再生可能エネルギー由来の電力を提供するプランや、時間帯別に料金が変動するプランなど、様々な選択肢があります。ご自身のライフスタイルに合ったプランを選ぶことで、電気代を抑えることが可能です。

 

③個人ができる対策:節電とプラン見直し

現在の状況下で個人が電気代を抑えるためにできることは、以下の通りです。

 

1. 徹底した節電:

      ・不要な照明を消す、エアコンの設定温度を適切にする、冷蔵庫の開閉時間を短くする、使わない家電のコンセントを抜く(待機電力の削減)など、基本的な節電対策を徹底しましょう。

      ・古い家電は省エネ性能が低いことが多いため、買い替えを検討するのも有効です。特にエアコンや冷蔵庫は消費電力が大きいため、最新の高効率モデルに替えることで大きな節約効果が期待できます。

      ・スマートメーターが導入されている場合は、HEMS(Home Energy Management System)などを活用し、電力使用量を可視化することで、より効率的な節電に繋がります。

       

      2. 料金プランの見直し:

        ・ご自身の電気使用量や時間帯ごとのパターンを把握し、現在の契約プランが最適か見直しましょう。

        昼間在宅していることが多い場合は昼間の料金が安いプラン、夜間に電力消費が多い場合は夜間の料金が安いプランなど、ライフスタイルに合わせたプラン変更を検討してください。

        複数の電力会社を比較検討し、より安価なプランを探すのも有効です。

         

        2.電気代動向(法人)

        法人向けの電気代も、個人向けと同様に高い水準で推移しており、多くの企業にとって深刻なコスト増要因となっています。特に製造業など、電力消費量の多い企業にとっては、事業継続や国際競争力に直結する問題です。

        大手電力会社の法人向け料金プランにおいても、燃料費調整額の上昇は避けられず、企業規模や業種によってその影響は異なりますが、全体的に厳しい状況が続いています。

         

        ①大口需要家向けの課題

        特別高圧受電をしている大口需要家の場合、個別の電力契約を結んでいることが多く、その契約内容によって電気代の変動要因は異なります。市場連動型プランを契約している企業は、JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場価格の変動が直接的に電気代に反映されるため、市場価格の高騰は即座にコスト増に繋がります。

         

        ②法人ができる対策

        法人が電気代高騰に対応するためにできる対策は多岐にわたりますが、特に以下の点が重要です。

         

        1. 徹底した省エネルギー化:

          ・生産設備の高効率化、空調設備の最適化、LED照明への切り替え、デマンド監視システムの導入など、大口の電力消費箇所から優先的に省エネ投資を進めましょう。

          ・従業員の省エネ意識も重要です。社内キャンペーンや教育を通じて、組織全体で省エネに取り組む文化を根付かせましょう。

          ・エネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入し、電力使用量をリアルタイムで可視化・分析することで、さらなる改善点を発見できます。

           

          2. 再生可能エネルギーの導入:

            ・自家消費型太陽光発電システムの導入は、電気代削減だけでなく、BCP(事業継続計画)対策や企業イメージ向上にも繋がります。初期投資はかかりますが、長期的な視点で見れば非常に有効な投資です。

            ・一方で、PPA(Power Purchase Agreement)モデルやリース契約を活用すれば、初期費用なしで再エネ設備を導入できるケースもあります。(諸条件あり)

            ・RE100(事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際イニシアティブ)への参画を目指す企業は、再エネ導入を積極的に進める必要があります。

             

            3. 電力契約の見直し:

              ・複数の新電力会社から見積もりを取り、自社の電力使用パターンに最適なプランを選択しましょう。

              ・ピークシフト・ピークカットなど、電力需要の平準化を図ることで、契約電力を下げ、基本料金を削減できる可能性があります。

              ・蓄電池の導入により、電力需要のピーク時に蓄えた電力を利用することで、契約電力を抑えることも可能です。

               

              4. 電力デマンド監視と調整:

                ・スマートメーターのデータを活用し、リアルタイムで電力デマンドを監視することで、契約電力を超過しないよう調整し、ペナルティ料金の発生を防ぎます。

                ・生産計画の見直しや設備稼働時間の調整により、電力ピークを避ける工夫も有効です。

                 

                3.今後の電気代見通し・・・原油価格、為替、国際情勢から予測

                今後の電気代の見通しは、以下の主要な要因に大きく左右されます。

                 

                ①原油価格の動向

                原油価格は、OPECプラスの生産政策、主要産油国の政情不安、世界経済の成長率、そして中国の経済動向などが複雑に絡み合って決定されます。

                 

                • 強気要因(価格上昇)

                ロシア・ウクライナ情勢の長期化、中東地域の不安定化、OPECプラスによる協調減産継続、主要産油国の設備投資不足による供給能力の制約。

                 

                • 弱気要因(価格下落)

                 世界的な景気後退懸念による需要の低迷、米国のシェールオイル増産、中国経済の減速。

                 

                現状、原油価格は高騰が一服しているものの、地政学リスクは依然として高く、予断を許しません。世界経済の動向次第では、需給が緩み価格が下落する可能性もありますが、突発的な供給不安が生じれば、再び高騰するリスクもはらんでいます。短期的には、現在の価格帯での推移が予想されますが、中長期的には変動リスクが高いと見ておくべきでしょう。

                 

                ②LNG価格の動向

                LNGは、日本の火力発電の主要燃料であり、その価格は電気代に大きな影響を与えます。LNG市場は、ロシアからの欧州向けパイプライン供給の減少以降、国際的な需給がタイトな状況が続いています。

                 

                • 強気要因(価格上昇)

                欧州での冬期の需要増、アジアでの需要回復、新規LNGプロジェクトの立ち上がりの遅延。

                 

                • 弱気要因(価格下落)

                暖冬による需要減、新規供給プロジェクトの順調な稼働。

                 

                2025年以降、新規LNG液化プラントの稼働が複数予定されており、中長期的には供給能力が増加し、価格が落ち着く可能性も指摘されています。しかし、欧州の脱ロシア依存の動きは継続しており、アジアとの買い付け競争が続くことが予想されます。

                 

                ③為替レートの動向

                日本はエネルギー資源の多くを輸入に頼っているため、為替レートは電気代に直接的な影響を与えます。円安が進めば、輸入コストが増大し、電気代に転嫁されることになります。

                 

                • 円安要因

                日米金利差の拡大、日本の貿易赤字基調、地政学リスクに伴う有事のドル買い。

                 

                • 円高要因

                日銀の金融政策変更(利上げ)、米国の利下げ、日本の経常収支改善。

                 

                現状の円安基調が大きく転換する要因は見当たらず、当面は円安による輸入物価の高止まりが電気代を押し上げる要因として継続する可能性が高いとみられます。ただし、日銀の金融政策の動向によっては、円高に振れる可能性もゼロではありません。

                 

                ④再生可能エネルギーの導入状況と電力系統の安定化

                再生可能エネルギーの導入が進むことで、化石燃料への依存度が低下し、中長期的には電気代の安定化に寄与すると期待されています。しかし、太陽光発電や風力発電は天候に左右されるため、電力系統の安定化に向けた投資(蓄電池、送配電網の強化など)が不可欠です。これらの投資費用が電気料金に反映される可能性もあります。

                 

                4.まとめ

                これらの要因を総合的に考慮すると、2025年後半から2026年にかけての電気代は、現在の高水準を維持しつつも、国際的なエネルギー価格の動向次第では若干の落ち着きを見せる可能性が高いと言えるでしょう。しかし、大幅な電気代の下落は期待しにくい状況です。特に、為替の円安基調が継続する限り、輸入燃料コストの高止まりは続く見込みです。

                短期的な価格変動リスクは依然として高く、特に夏場の電力需要期には、冷房需要の増加や突発的なトラブルにより、スポット市場価格が高騰する可能性があります。企業、個人ともに、引き続き節電努力と効率的な電力利用を心がけることが重要です。この情報が、皆様の電気代対策の一助となれば幸いです。

                最後までお読みいただきありがとうございました。

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