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コラム

創エネ・再エネ
急拡大する系統用蓄電池とは?(基礎編)

今回は、系統用蓄電池解説として2回にわたってお送りさせていただきます。

第1回は基礎編で、

「系統用蓄電池とは何か」
「なぜ今注目されているのか」

を理解いただき、

第2回は実践編として、

「投資判断」
「事業の進め方」
「2026年6月時点の最新の入札市場動向」

を解説します。

1.なぜ今、系統用蓄電池が盛り上がっているのか?

太陽光発電のFIT制度(固定価格買取制度)が落ち着いた今、再生可能エネルギー業界に新たに急拡大しているのが「系統用蓄電池」です。

「蓄電池って、家庭で使うあれと何が違うの?」
「儲かるって聞くけど本当?」
「結局どうやって事業をスタートすればいいの?」

といった疑問を持つ方も多く、今回は、設備の概要、3つの大きなメリット、市場に参加している主要プレイヤー、そしてビジネスモデルを解説していきます。

 

2.系統用蓄電池の設備概要

系統用蓄電池とは、電力会社の送配電ネットワーク(電力系統)に直接接続された、蓄電システムのことを指します。

一般家庭で使う蓄電池の数千倍〜数万倍の容量を持ち、一般的には「高圧」と呼ばれる出力2MW、容量8MWh規模から、大型では「特高」と呼ばれる出力100MWを超えるものまで存在します。電力会社の発電所ではないため「発電設備」ではありませんが、市場では「電源」と同等に扱われ、独立した事業者が建設・運用するケースが急増しています。

家庭用や産業用蓄電池が「その建物の中で電気を貯めて使う(自家消費)」ことを目的とするのに対し、系統用蓄電池は電力系統(電線)に直接続し、充電・放電を繰り返して電力市場で取引することで収益を上げるのが最大の違いです。

系統用蓄電池の典型的な構成は次の5つの設備から成り立ちます。

機器役割
蓄電池本体(セル/モジュール/ラック)電気の充放電
PCS(パワーコンディショナー)直流(DC)と交流(AC)を相互変換
EMS(エネルギーマネジメントシステム)充放電タイミングの最適制御
受変電設備(キュービクル、変圧器)系統電圧へ昇圧/降圧
消防・防火設備熱暴走時の延焼防止

 

系統用蓄電池には、2種類のリチウムイオンセルが使われています。リン酸鉄リチウム(LFP)と三元系(NMC:ニッケル・マンガン・コバルト)です。EVではエネルギー密度の高い三元系(NMC)が主流ですが、系統用蓄電池や工場などで使われる産業用蓄電池では、長寿命に優れるリン酸鉄リチウムの採用が急速に進んでいます。

たとえば米国Vistra社の蓄電所(300MW・三元系)は2022年と2025年に大規模火災を起こしましたが、こうした事故を契機として、リン酸鉄リチウムへの移行が加速したといわれています。

CATL、BYDといった中国メーカーがリン酸鉄リチウムで圧倒的なシェアを持ち、日本市場でも2025年以降の新規プロジェクトの多くがリン酸鉄リチウムに移行しています。

 

3.系統用蓄電池のメリット

①電力市場での収益化(投資回収が見込める)
最大のメリットは、複数の電力市場で同時に収益を生み出せる点です。これを業界では「レベニュー・スタッキング(収益積み上げ)」と呼びます。

具体的には、

◆卸電力市場(JEPX)でのアービトラージ、

◆需給調整市場での調整力提供、

◆容量市場・長期脱炭素電源オークションによる固定収入

のモデルが基本です(詳細は第2回で深掘りします)。

 

②再生可能エネルギーとの抜群の親和性
太陽光発電は昼間に余って、夕方に不足し、風力発電は夜間や悪天候時に過剰になります。
蓄電池は「電力の需要と供給のギャップ」を吸収するために活用されます。

 

③土地利用効率が高い
太陽光発電は100kWあたり1,000㎡程度の土地が必要ですが、蓄電池は同様の広さで、出力2MW・容量8MWhの設備が設置できます。低圧の系統用蓄電池では、30㎡程度の広さで設置することができ、市街地近郊の遊休地、工場内の空きスペースなど、太陽光では不可能だった立地でも事業化できる点が強みです。

 

④補助金や優遇税制が活用できる
国や自治体から、系統用蓄電池に関する補助金や優遇税制が発表されています。
諸条件はございますが、系統用蓄電池事業への投資に対する補助金や優遇税制となり、上手に活用することで、非常に高い投資効率を出すことができます。

 

4.主要メーカー・プレイヤー

系統用蓄電池ビジネスのエコシステムは、

①メーカー
②開発・運営事業者(蓄電所オーナー)
③EPC
④アグリゲーター

の各プレイヤーが連携して形成されています。

 

<蓄電池メーカー>

区分社名特徴・強み
海外CATL世界シェア首位。LFPセルで圧倒的なコスト競争力。
海外BYD電池からPCSまで垂直統合。MC Cubeシリーズが主力。
海外TeslaMegapackで世界最大級の蓄電所を多数手掛ける。
海外HuaweiSmart Stringによる分散制御・遠隔O&Mに強み。
海外SungrowPCS世界シェア首位。中国系PCSの代表格。
海外LG Energy Solution韓国大手。NMC実績多いがLFP展開も加速中。
国内住友電気工業レドックスフロー電池(長時間貯蔵)で独自性。
国内TMEIC国産PCSの最大手。大型案件で多数採用。
国内京セラ住宅向けノウハウを産業用に展開。
国内パワーエックス国産BESS新興メーカー。東急不動産案件等で採用実績。

 

<開発・運営事業者・EPC・アグリゲーター>

カテゴリ代表的なプレイヤー
総合商社系三井物産、三菱商事、住友商事、伊藤忠商事、丸紅、双日
電力会社系東京電力リニューアブルパワー(RP)、関西電力、JERA、九州電力、中部電力、東北電力
再エネIPP系ユーラスエナジー、リニューアブル・ジャパン、レノバ、コスモエコパワー
新興・スタートアップパワーエックス、Looop、afterFIT、日本蓄電池
アグリゲーター東芝ESS、デジタルグリッド、エナリス、Shizen Connect、RE100電力
不動産・インフラ系東急不動産、東京ガス、大阪ガス、Jパワー

“最重要なのはアグリゲーター選び”
同じ系統用蓄電池を設置しても、市場予測の精度や応動制御の能力によって、収益は大きく変わるとも言われます。蓄電所オーナーにとってアグリゲーターは「資産運用会社」のような存在であり、最も慎重に選ぶべきパートナーです。実績、市場分析力、契約条件(成功報酬率や最低保証)の3点を比較検討することが推奨されます。

 

5.ビジネスモデルの基本

系統用蓄電池の収益モデルは、単一の市場に依存せず、複数の市場を組み合わせて積み上げる「レベニュー・スタッキング」が基本です。具体的には次の3つの市場を、AIや専門ノウハウを用いて使い分けます。

 

①卸電力市場
JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場は30分単位で電力が売買される市場です。太陽光発電が大量に動く昼間は供給過多で価格が下がり、夕方〜夜にかけて需要が高まると価格が急騰します。この「価格差(ボラティリティ)」を利用し、安いときに充電→高いときに放電することで利益を得ます。これを「アービトラージ取引」と呼びます。

 

②需給調整市場
電力系統は常に50Hz(東日本)または60Hz(西日本)の周波数を維持しなければなりません。需給がほんの少しでもズレると、この周波数が乱れるため、東京電力パワーグリッド(PG)などの一般送配電事業者が「調整力」を確保しています。蓄電池はこの調整力を提供することで、「待機していること」自体への対価(ΔkW価値)と、「実際に放電した分」への対価(kWh価値)の両方を得ることができます。

 

③容量市場・長期脱炭素電源オークション
容量市場は「4年後の供給力をあらかじめ売っておく」市場で、電源に対する保険料のような安定収入源です。さらに2023年度から始まった「長期脱炭素電源オークション」は、20年間の長期固定収入が保証される制度で、プロジェクトファイナンスの可能性を大きく広げました。

 

6.第1回のまとめ

第1回では、系統用蓄電池の設備概要、5つのメリット、主要プレイヤー、そしてビジネスモデルの基本構造を見てきました。ポイントは次の3点に集約されます。

  • 系統用蓄電池は「電力系統に直接つながる大型の蓄電池」であり、市場取引で収益を上げる新しいビジネスである。
  • メーカー、開発事業者、EPC等様々なプレイヤーが存在するが、事業のキーマンとなるのは、アグリゲーターであり、収益性が大きく変わる。
  • 収益は「レベニュー・スタッキング」(卸電力市場+需給調整市場+容量市場/長期脱炭素電源オークション)で、複数市場の組み合わせで収益を最大化する。

第2回(実践編)では、より具体的な「投資判断の数字」「事業を進めるための実務フロー」「2026年6月時点での最新の入札市場動向」を、シミュレーション結果や実例とともに掘り下げていきます。

本日もお読みいただき、誠にありがとうございました。

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