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コラム

脱炭素
クリーンエネルギー戦略とは?経済産業省の中間整理内容を紹介します!

日本では、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」、2021年4月に「2030年46%削減」が表明されました。
それぞれの目標を達成するために、経産省が公表している脱炭素に関する計画書には、グリーン成長戦略・第6次エネルギー基本計画・クリーンエネルギー戦略の3つがあります。
これらの3つの脱炭素に関する国の計画を紹介し、企業がどのように進んでいくべきか解説します。

1.グリーン成長戦略・第6次エネルギー基本計画・クリーンエネルギー戦略の違い

「グリーン成長戦略」(2021年6月に策定)

2020年10月の「2050年カーボンニュートラル宣言」を受けて、将来のエネルギー・環境の革新技術(14分野)について技術戦略+産業戦略を策定しています。

14分野は以下となり、1番目に洋上風力や太陽光、地熱など、再生可能エネルギーに関する新技術についての計画が記されています。

(引用元:グリーン成長戦略(概要) ―経済産業省)

技術のフェーズに応じて、政策(以下8項目)を総動員することが明記されています。

(引用元:グリーン成長戦略(概要) ―経済産業省)

「第6次エネルギー基本計画」(2021年10月に閣議決定)

2021年4月の「2030年46%削減」の表明を受け、更に50%の高みを目指して挑戦を続けるために、エネルギー政策の道筋を示すことが重要テーマとなっています。

同時に、日本のエネルギー需給構造が抱える課題の克服が、もう一つの重要なテーマとなっており、安全性の確保を大前提に、安定供給の確保やエネルギーコストの低減(S+3E)に向けた取組を進めます。

第6次エネルギー基本計画では、脱炭素化に向けて、再生可能エネルギーの主力電源化を徹底すると記載があります。
以下、そのための項目です。

再エネの主力電源化に向けて
地域と共生する形での適地確保
改正温対法に基づく再エネ促進区域の設定(ポジティブゾーニング)による太陽光・陸上風力の導入拡大、再エネ海域利用法に基づく洋上風力の案件形成加速などに取り組む。
事業規律の強化
太陽光発電に特化した技術基準の着実な執行、小型電源の事故報告の強化等による安全対策強化、地域共生を円滑にするための条例策定の支援などに取り組む。
コスト低減・市場への統合
FIT・FIP制度における入札制度の活用や中長期的な価格目標の設定、発電事業者が市場で自ら売電し、市場連動のプレミアムを受け取るFIP制度により再エネの市場への統合に取り組む。
系統制約の克服
連系線等の基幹系統をマスタープランにより「プッシュ型」で増強するとともに、ノンファーム型接続をローカル系統まで拡大。再エネが石炭火力等より優先的に基幹系統を利用できるように、系統利用ルールの見直しなどに取り組む。
規制の合理化
風力発電の導入円滑化に向けアセスの適正化、地熱の導入拡大に向け自然公園法・温泉法・森林法の規制の運用の見直しなどに取り組む。
技術開発の推進
建物の壁面、強度の弱い屋根にも設置可能な次世代太陽電池の研究開発・社会実装を加速、浮体式の要素技術開発を加速、超臨界地熱資源の活用に向けた大深度掘削技術の開発などに取り組む。

「クリーンエネルギー戦略」(2022年6月に中間整理)

グリーン成長戦略や第6次エネルギー基本計画には記されていない、主に需要サイドのエネルギー転換の道筋や、経済社会・産業構造全体をクリーンエネルギー中心へと転換していくために必要となる具体的な政策について議論しています。

クリーンエネルギー戦略について説明します。

2.クリーンエネルギー戦略の内容

クリーンエネルギー戦略では、ロシアによるウクライナ侵略や電力需給逼迫の事態を受け、エネルギー政策の方向性について再確認されました。
それは、「再エネ、原子力などエネルギー安保及び脱炭素の効果の高い電源の最大限の活用」(4月8日総理記者会見)など、エネルギーの安定供給確保に万全を期し、その上で脱炭素の取組を加速する」というものです。

そのためにすべきこととして、様々な対策が述べられていますが、中小企業に関連しそうな項目は以下の3点です。

① 中小事業者の省エネ取組の深堀り

中小事業者については、全体として経済的に合理的な範囲で10%前後の省エネ余地があるが、知見・ノウハウや人材の不足等が課題で進んでいないため、省エネの促進に向けた支援体制の構築(より詳細なエネルギー診断等)を進めていくとしています。

② 建築物省エネ法における省エネ対策強化

2030年度以降新築される住宅・建築物について、ZEH・ZEB基準の水準の省エネルギー性能の確保を目指し、整合的な誘導基準・トップランナー基準の引上げや省エネルギー基準の段階的な水準の引上げを、遅くとも2030年度までに実施するとしています。

③ 需要家主導による再エネ導入(UDAモデル)の促進

製造業等を中心として、追加性のある再エネ調達が求められており、需要家、発電事業者、小売事業者が一体となって再エネ導入を進めるUDA (User-Driven Alliance)モデルの拡大が不可欠であるとしています。
実際に令和3年度補正・令和4年度当初予算「需要家主導による太陽光発電導入補助金」では、このようなUDAモデルによる太陽光発電設備の導入に対して、補助を実施しています。

3.脱炭素化により産業構造をどう転換していくか

上記と同時に、クリーンエネルギー戦略では、グリーントランスフォーメーション(GX)やそのための具体的な道筋や取り組みを示しています。

高付加価値化や事業転換などによる成長と、脱炭素等を起点とした新たな価値・市場の創出による成長を、ともに実現する。
「高付加価値化」は「脱炭素化による変化の方向性・時間軸」を能動的に取り込むものとする。
エネルギーの脱炭素化に向けては、徹底した省エネを追求した上で、CO2フリーなエネルギー消費へ転換していく。

下記のように、まずは脱炭素を含む投資行動(エネルギー生産性など)を評価するKPIを新たに導入することが示されています。

(引用元:クリーンエネルギー戦略 中間整理 産業技術環境局・資源エネルギー庁)

このように、中長期の炭素収益性がKGIとなり、脱炭素への投資や事業の環境負荷がKPIとなれば、企業の脱炭素への対応は必要不可欠なものとなるでしょう。

4.企業が脱炭素に取り組むメリット

クリーンエネルギー戦略では、企業が脱炭素に取り組むことのメリットを3つ掲げています。

①省エネによるコスト削減
計画的・効果的な投資やプロセス改善により、エネルギーコストを削減できます。

②資金調達手段の獲得
金融機関がESG投資を推進しているため、脱炭素経営の状況を加味した融資条件の優遇等を受けられる機会が拡大します。

③ 製品や企業の競争力向上
取引先企業から選考されやすくなり、既存の取引先との強固な関係性の構築のみならず、新規の取引先開拓にもつながります。 製品単位の排出量の見える化が進めば、製品の差別化を行うこともできます。

5.クリーンエネルギー戦略で策定されている企業の脱炭素の取り組み方

クリーンエネルギー戦略では、企業がどのように脱炭素に取り組むべきかが明記されています。

①温室効果ガス排出量の見える化
まずは現状のエネルギー使用量を把握して削減ポテンシャルを検証します。

②カーボンニュートラルに向けた設備投資
省エネ・省CO2効果が期待できる場合、再エネ設備の導入や高効率な生産設備への入替などにより省エネ・省CO2を行います。

③グリーン製品市場の創出
サプライチェーン全体で「見える化」・排出削減を行うことで、当該製品の競争力強化、当該サプライチェーンの強靱化を図ります。

6.中小企業も脱炭素対応が必須に!

クリーンエネルギー戦略では、主に大企業向けの脱炭素化の施策が明記されています。
しかし、中小企業についても早期に脱炭素化に取り組む必要があります。

企業をとりまく状況から紐解いていきましょう。

サプライチェーン企業RE100などの脱炭素イニシアティブでは、サプライチェーン全体での排出量削減が求められる。
消費者SDGsに象徴されるサステナビリティへの関心が高まっている。

今や大企業はサプライチェーン全体での脱炭素化が求められています。
そのため、RE100等の脱炭素イニシアティブに加盟している大企業と取引のある中小企業では脱炭素対応が必要となっています。

また消費者も、SDGsの観点から環境配慮行動をとるようになってきており、脱炭素対応は大きなアピールとなります。

他にも、脱炭素に対応していることで、金融機関からの融資が得られる、など、脱炭素に対応することは実利に結びつくようになってきています。
クリーンエネルギー戦略からは、まず中小企業は「温室効果ガス排出量の見える化」や「カーボンニュートラルに向けた設備投資」を行うことが、グリーントランスフォーメーションにつながることが読み取れます。

脱炭素への対応はコスト削減だけでなく、資金調達手段の獲得など経営に大きなメリットがありますので、ぜひご検討ください。

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